どんこのアル中 日記

名古屋在住の【年金生活者】。方丈記&徒然草。

昭和名画座 小津安二郎「浮草」


家族の、あれやこれや、どうしたこうした、なんだかんだ、ありゃりゃこりゃりゃ等を描くことが得意だった小津にしては、めずらしい旅芸人の一座の織りなす人間模様を描いた作品。「彼岸花」で「山本富士子」に出演してもらったお礼に、松竹ではなく、大映で撮影した一篇。違う映画会社で撮るなら、いつもと違う作品をと考えた小津のチャレンジ精神を感じる。巨匠は、決して現状に満足しない。常に挑戦者なのだ。それ故、巨匠であり続けることが出来る。

小津が変化球なら、俺も変化球。今回は映画自体ではなく、音楽に注目。いわゆるサウンドトラック。
小津の音楽といえば、作曲家「斎藤高順」。なぜか「黛敏郎」や「芥川也寸志」ほど評価されない。残念無念。
「浮草」は音楽的にも画期的であった。「小津調ポルカ」の誕生である。小津は、チェコの流行歌「ビア樽ポルカ」がお気に入り。「浮草」以前の映画「風の中の牝鶏」「宗方姉妹」でも劇中に使用。斎藤高順は「ビア樽ポルカ」を参考に、アコーディオンとバイオリンが主旋律、ところどころピッコロやマリンバというシンプルでありながらな哀愁漂うポルカ調の音楽を作曲。この曲が小津の琴線にふれた。これ以降、この曲調を多用。これが「小津調ポルカ」と呼ばれる。以後「秋日和ポルカ」「秋刀魚の味ポルカ」へと続き、後期の小津映画の象徴となる音楽となる。小津映画を陰で支える隠し味。俺は、ポルカ調の音楽を聴くと、必ず小津を思い出す。

「浮草」でも、冒頭シーンに使用。主人公「中村鴈治郎」の出演シーンでは、必ずこのポルカが流れた。

音楽でもイケてる安二郎。