どんこのアル中 日記

名古屋在住の【年金生活者】。方丈記&徒然草。

【志ん生】と、酒と、俺。

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朝五合 昼五合 夜一升。古今亭志ん生の酒である。

志ん生には、酒にまつわる逸話が多い。有名なのは、関東大震災の時の話である。地震で酒が地面にこぼれるといけないと思い、酒屋へ駆け込む。酒屋の主人はそれどころではないので、勘定をとらず、その場で一升五合ほど飲んで泥酔して帰宅。夫人のりんは当時長女を妊娠中。大地震の最中に家から飛び出して泥酔して帰宅した志ん生に、たまりかねて大変な剣幕で怒った、志ん生は、そこで初めて妻の身重を知る、というもの。

俺にも、疑似体験がある。2回目の入院の直前のこと。「入院すると、酒が飲めんなぁ~」と不埒な考えに染まった俺は、コンビニで日本酒紙パック1.8リットルを買ってしまった。それも880円という廉価なアル中御用達というような酒。それも深夜に家族に隠れて。まぁ、配偶者には完全にばれていたが・・・。当然1.8リットルを一晩で飲み切れずはずもなく、少し残した。当然、翌朝はヘロヘロで、入院しないと駄々をこねたら、87歳になる老母に思いっ切り叩かれた。母に叩かれたのは、63歳の人生の中で、初体験。にもかかわらず、入院中は少しばかり残してきた酒が気になってしょうがなかった。なんか落語【地獄八景亡者戯】、サバが原因で死んだ喜六が、死ぬ前に半身残してきたサバが気になってしょうがないというシチュエーションによく似ている。あれ、情けなや。ヤレヤレ。

志ん生は、酒に酔って高座に上がったことが何度かある。「東横落語会」では大幅に遅刻し、真っ赤な顔、怪しい呂律で高座を務めた。噺も支離滅裂だったが、その様子が笑いを誘い、当日一番客の拍手を浴びたのは、なんと、志ん生だった。人形町末廣の大喜利でも居眠りしてしまい、いくら起こしても起きなかった。客が寝かしといてやれよ、といったそうだが、ほんまかいな。

高座に上がらなくなってからも、毎日酒を飲んでいた志ん生。晩年は体を心配した家族がこっそり水で薄めた酒を飲ませていた。ある日、長女がなにかを感じ取って、薄めない酒を飲ませたところ、大いに満足し、翌日に亡くなったという。十代で酒を覚え、最後まで酒を愛した人生だった。

酒がいちばんいいね。酒というのは人の顔を見ない。
貧乏人も金持ちも同じように酔わせてくれるんだ。