酔 ふた め に 飲む 酒 だ から、 酔 後 の 行状 が 言語道断 は 申す までも なく、 さめれ ば 鬱々 として 悔恨 の 臍 を かむ こと、 これ は あらゆる 酒飲み の 通弊 で、 思ふ に、 酔 つ 払 つた 悦楽 の 時間 よりも 醒め て 苦痛 の 時間 の 方 が たしかに 長い ので ある が、 それ は 人生 自体 と 同じ こと で、 なぜ 酒 を のむ かと 云 へ ば、 なぜ 生き ながら へる かと 同じ こと で ある らしい。阪口安吾【酒のあとさき】
酒 は 更に 心 で 嚙 み しめる 味 ひ を 持つ て 居る。 あの「 醉 ふ」 と いふ のは 心 が 次第に 酒 の 味 を あ ぢ は つ て ゆく 状態 を いふ の だ と 私 は おも ふ。 斯 の 酒 の うまみ は 單 に 味 覺 を 與 へる だけで なく、 直ちに 心 の 營養 と なつ て ゆく。 乾い て ゐ た 心 は うる ほ ひ、 弱 つて ゐ た 心 は 蘇り、 散らば つて ゐ た 心 は 次第に 一つ に 纒 つて 來 る。若山牧水【酒の讃と苦笑】
私 は 禁酒 を しよ う と 思っ て いる。 このごろ の 酒 は、 ひどく 人間 を 卑屈 に する よう で ある。 昔 は、 これ に 依っ て 所謂 浩然 之 気 を 養っ た もの だ そう で ある が、 今 は、 ただ 精神 を あ さはかに する ばかりで ある。 近来 私 は 酒 を 憎む こと 極度 で ある。 いやしくも、 なす ある ところ の 人物 は、 今日 此 際、 断じて 酒杯 を 粉砕 す べき で ある。太宰治【禁酒の心】
アル中治療中なのに、こんな文章ばっかり読んでどうする。アル中は、アル中に誘われるか。花に誘われる蜜蜂のごとく。まぁ、名文家は、名文に惹かれるに訂正しとくか・・・。色々トラブルあるしな。やれやれ。