アル中の根本的な原因が解明された。
お酒には、楽しい気分になる、緊張をほぐし、嫌なことを忘れさせてくれる、など様々な効果がある。これらの一時の快感に魅了され、アル中になる。
脳には快楽、恐怖、不安、痛みなど、さまざまな機能を担当する神経回路が存在する。アルコールに対する感度はバラバラ、どの回路が中毒（特に強迫的・衝動的な飲酒癖）の引き金となるかは不明だったが、脳内で最初にアル中になる神経回路がわかってきた。
意外にも引き金となっていったのは、覚せい剤などにみられる快楽の回路ではなく、危険を回避する回路だった。アル中になると、この回路の判断システムが常に活性化される。
薬物中毒は、快楽のため。覚せい剤には脳細胞に結合して、ドーパミンなどの快楽物質を強制的に分泌させる作用があり、人間は同じ快楽を得ようと覚せい剤を摂取し続ける。
しかし、アル中は、異なる2つの段階を経て常習化を起こしている。
脳には、不快感や緊急の状態を感知する【警報システム】と、警報システムからの情報を処理して、回避や逃亡をする必要があるかを見極める【判断システム】が存在する。警報システムと判断システムが正常に動くことで、動物は危険な状態を回避することが可能になる。
アル中の場合、このシステムが逆で、先に判断システムのはたらきが鈍る。危機的な状態に対して反応することができなくなり、恐怖が増幅していく。その結果、【現実逃避】の酒を飲む。
判断システムのエラーは生物にとって致命的であるため、お酒を多量に摂取し続けていると、体が反発し、逆に判断システムの日常的な活性化を起こす。判断システムの活性化は危機を回避する力を与えてくれるが、休みなしの臨戦態勢は精神を消耗させ、アル中になる前ならば耐えられていたストレスさえ我慢できずに、【その場しのぎ】に、お酒を飲む。
嫌な現実を忘れるためにアルコールを乱用していると、普通の生活のなかのストレスさえ耐えられなくなる。アルコールは現実逃避という誘惑で、人間を中毒に引き込んで、最終的に脳をストレスに対して脆弱化させる。
こんな感じ、だよ～ん。
俺の「飲みたい欲求」より、「飲めない恐怖」がまさる理由がよくわかった。心にストンと落ちた。まぁ、俺の場合、今さら知っても、もう遅いけど。
コロナ禍の中、アル中予備軍の皆さん、【現実逃避】の酒は、とても危険なのだ。リモートワークの際の【昼酒】は厳禁。肝臓に銘じよ。いや、肝に銘じよ。アル中が言っても、説得力ないわな。ぽてちん。
参考文献『Science Advances』に掲載された論文
