将棋の「しょ」の字くらいしか知らない吾輩でも、楽しく読める好著。
天才を見守る師匠の優しさにほっこりする。1話完結100話のエッセイ集。ベストの1話は、「パソコンショップでの攻防」
現代の棋士には、パソコンが不可欠。研究用に、 ＤＬ（ディープラーニング）将棋ソフトというものがあるそうな。藤井聡太も当然使用している。このソフトを起動させるには、高性能のパソコンが必要。渡辺元名人の使用しているパソコンは、約130万円。ガチョーン。
杉本師匠も、弟子に負けじとDL将棋ソフトを導入しようと新たなパソコン購入を決意。藤井聡太に相談。
「DL将棋が使えるパソコンを探している。金に糸目はつけないから」
後日、返信メールが来る。丁寧な説明がびっしり。師匠の懐具合を配慮してか、リーズナブルな感じ。早速、パソコンショップに出向く。
「将棋研究用に知人（実は藤井聡太）に勧め られて。最上位 機種の見積もりも知りたいです」 もちろん、素性は明かさない。
「このスペックに興味を持たれるとは。かなり将棋がお好きなんですねえ」と店員。そりゃ聡太。
見積金額、フルスペックだと、約130万円。渡辺元名人のパソコンと同額。ガチョーン。見積書をもらい、帰ろうすると、店員の一言。
「お客様、これをご購入されれば藤井プロ の気分になれますよ」 そりゃ聡太。つぶやく、師匠。
「藤井プロに会ったら、聞いておきますね」
イチローに仰木あり、翔平に栗山あり。一流のアスリートには、陽気な指導者がよく似合う。
