どんこのアル中 日記

名古屋在住の【年金生活者】。方丈記&徒然草。

ライスシャワーと菊花賞

      
今週末は、菊花賞。以前、こんな記事を書いた。
doncoyasuo.hatenablog.com
前回は、なんだか暗いイメージになった。今回は、明るく行こう。

俺が競馬を始めたのは、1992年。今からちょうど30年前。ミホノブルボンがダービー馬になった年である。それまでは競馬に興味はなかったが、近くに場外馬券発売所があったので、なんとなく出かけた。ちょうど、菊花賞の日だっだ。建物は近代的だが、一歩中に入ると煙草臭くて、人生の落後者の群れがいた。おれも人生の落後者の一員なので、それなりに心地良い空間ではある。類は友を呼ぶというか。
競馬は初体験のなので、ぼんやりしていると、ほとんど歯のないおっさんが、「にいちゃん、競馬初めてかい?」と声をかけて来た。「ええ」と答えると、馬券購入のマークシート書き方など丁寧に教えてくれた。みょうに親切な人だなと不思議に思った。後に知ったのだが、初心者相手に親切にして、馬券が的中すると、俺が教えてやったのだから、いくらか寄越せ!とい輩がいるそうだ。俺は、煙草臭いのが苦手で、馬券を買って、すぐに帰ったが、あの歯のないおっさんに絡まれるのも一興だったなと残念に思った。
さて、馬券購入だが、今でもそうだが、俺はほとんど検討をしない。馬名がいいとか。馬の背負った物語で購入する。たとえば親馬が果せなったレースをその子の馬が勝つとか、厩舎が火事ににあい僚馬がほとんど死んだとか、怪我を続きで一年ぶりの復帰レースとか・・・。その馬が背負っている物語が好きなのある。一応文学部出身なだけに。もう誰も知らないだろうが、俺は、競馬に関しては、寺山修司なのだ。
俺は、今でもそうだが、単勝しか購入しない。現在、馬券は、単勝複勝応援馬券枠連馬連馬単、ワイド、3連複、3連単WIN5の10種類もある。当時は、もう少し少なかった。俺は単勝のみ。他の馬券購入する知識も意欲もお金もないせいだが、「競馬は、一着を決める」ものだという哲学を持っている。なんだか、かっちょいいね。
さて、馬券購入。一番人気は、ミホノブルボン。デビューから菊花賞まで7戦無敗でクラシック二冠を達成し、史上5頭目シンボリルドルフ以来2頭目の無敗での三冠達成が掛かっていた。さらに、シンボリルドルフは朝日杯に出走していなかったため、3歳GⅠを含む無敗で三冠達成となれば、初の偉業だった。競馬ファンのほとんどがその期待をしていた。単勝オッズ1.5倍、圧倒的な1番人気がその証である。俺は、根っからの天邪鬼である。三冠のかかった一番人気の馬なんぞ、とても買えない。・・・と言っても、馬の事は全然知らないので、思案に暮れた。馬名で選ぼうと思ったが、競馬初心者にとっては、ほとんどわけがわからん名前である。唯一わかったのが、ライスシャワー。結婚式に新郎新婦に、ライスを降り注ぐセレモニーのこと。「子宝に恵まれるように」「食べるものに困らないように」という、夫婦への祝福の意味がある。うん、いんじゃないか、ライスシャワー。見れば2番人気、ダービーも2着。あながち悪い選択ではない。見れば牡馬にしては、小さく、なんだか可愛い。馬券購入初体験なので、100万円といきたいところだが、なにしろ初めの事だし、金もないし、ささやかに単勝1000円購入。まぁ、記念としてのつもりで購入。

さて、実際のレース。杉本清アナウンサーの名調子とうぞ!

「ようやくここで、ようやくここでミホノブルボンが先頭に立った!ミホノブルボン先頭で第4コーナーをカーブする! あと400Mか!どっからでもなんでも来い!という感じかミホノブルボンミホノブルボンライスシャワーが襲い掛かってくる! 外からライスシャワー!外からライスシャワー!黄色い帽子はマチカネ!黄色い帽子はマチカネタンホイザ! さあミホノブルボン逃げる逃げる!外からライスシャワーライスシャワーかわしたか! ライスシャワーかわしたか!内からマチカネ!内からマチカネ! あ~ライスシャワー先頭に立った!ミホノブルボンは3冠にならず~! ライスシャワーです!ライスシャワーです!あ~という悲鳴に変わりましたゴール前! あ~という悲鳴に変わりましたゴール前!杉本清アナウンサー

通常は、歓声に包まれるゴール。それが悲鳴である。悲鳴って、随分だな杉本清と思うが、それがほとんど競馬ファンの気持ちである。勝ちタイムは3分05秒0のレコードタイムで無敗の三冠の夢は破れた。ミホノブルボンは朝日杯も制しているため、勝っていれば無敗の四冠馬の誕生だった。現在でも無敗の四冠馬はコントレイルただ1頭のみである。しかもミホノブルボン自身、レコードタイムで走破しているのでその惜しさと言ったら相当のものである。
払い戻しは、単勝730円。2番人気の単勝で730円!馬連490円。単勝馬連の約1.5倍の払い戻し。びっくり仰天!1000円が一瞬にして、7300円になった。競馬にありがちなビギナーズラック。その後、我が人生は、ありがちな競馬スブスブ人生。やれやれ。
4コーナー先頭で、上がり3ハロン35秒0というタイム。文句無い素晴らしい数字で先行集団の位置から使って交わし切ったライスシャワーはとんでもない馬だったと言える。菊花賞勝利は、フロックではなかった。強靭なステイヤー(長距離馬)誕生の瞬間でもあった。
しかし、ミホノブルボンの【クラシック3冠】を期待していたファンとしては、歴史的瞬間をライスシャワーに「邪魔された」という認識がほとんど。競走後の場内には「拍手もなくて、ブーイングのような雰囲気」、「今までにない、ちょっと何かおかしな雰囲気」も漂った。G1制覇にもかかわらず、その評価は「憎まれ役」であった。勝ったライスシャワーは翌年の天皇賞・春ではメジロマックイーンを破り、同競走三連覇をレコードタイムで阻止したことから「関東の刺客」「黒い刺客」「レコードブレイカー」の異名を取る。その話は、来年の春まで、とっておきます。