どんこのアル中 日記

名古屋在住の【年金生活者】。方丈記&徒然草。

はな恋 二番煎じ【ちょっと思い出しただけ】鑑賞す

      
テーマは、男と女、そして時間。たいした事件も起こらず、二人の醸し出す「時の流れ」を淡々と描く。まさに【花束みたいな恋をした】の二番煎じだが、イケてる。二番煎じには、一番搾りにはない味がある。

ちょっと思い出しただけ
怪我で夢を諦めた元ダンサーの男とタクシードライバーの女の6年間に及ぶ恋愛模様を、7月26日の1日を通して描く。めまぐるしく変わっていく東京の中心で、何気ないある一日が流れていく。特別な日も、そうでない日もあるが、決して同じ日は来ない。二度と戻れない愛しい日々を、ちょっと思い出す。
バイプレイヤーズ もしも100人の名脇役が映画をつくったら」「くれなずめ」など意欲的な作品を手がけ続けている松居大悟監督のオリジナル脚本を、池松壮亮伊藤沙莉の主演で映画化。ロックバンド「クリープハイプ」の尾崎世界観が自身のオールタイムベストに挙げる、ジム・ジャームッシュ監督の代表作のひとつ「ナイト・オン・ザ・プラネット」に着想を得て書き上げた新曲「Night on the Planet」に触発された松居監督が執筆した、初めてのオリジナルのラブストーリー。第34回東京国際映画祭コンペティション部門に出品され、観客賞を受賞。

怪我でダンサーの道を諦めた男と、タクシードライバーの女を軸に、様々な登場人物たちが登場する。女性タクシードライバーというエッジの効いた設定。彼女と客の些細な会話を通じて、都会に暮らす人生の機微をエスプリたっぷりに描く。
【はな恋】と似た設定だが、【はな恋】にはない味がある。【はな恋】は、サブカルチャーの情報量が多すぎる。それが【はな恋】の魅力のひとつだったのだが、【ちょっと思い出しただけ】には、それがない。その分だけ、淡々とした時の流れが沁みてくる。何と表現していいか、俺の筆力では限界がある。残念。
【はな恋】は、良くも悪くも、坂元裕二の脚本の映画だ。それが【はな恋】で売りでもある。よく「映画は、脚本だ」という輩がいるが、俺が「映画は、映画だ」と反論する。確かに脚本は、映画の設定図だが、それ以上でもそれ以下でもない。【はな恋】は、才能あふれる脚本家に引っ張られた感のある映画だ。文学や映画、音楽などのカルチャーアイテム、ミイラ展やガスタンク、イヤホーンなどの点描、そして「押井守」。それらは確かに面白いが、その分、視線がそちらに奪われる。肝心の「男と、女。そして時の流れ」というテーマにも水を差す結果になる。ここで【はな恋】を非難する気は毛頭ない。ただ、本作との比較としての考え、表現である。(「本作」なんて、なんか映画評論家気取りかよ)。

監督の松居大吾の「開き直り」も微笑ましい。

きっと花束みたいとか⾊々⾔われるんだろうな。⾔われるよもう。⾔われる前に⾔うよ。でも当た ってるしなぁ。そんな迷いにこの先何度も包まれる気がするけど、それ以上に、かけがえのない優しい想いに包まれる人に届いたらいいなと思います。
愛がすべてなんかじゃないけど、愛がすべてで。愛ってなんだよ。愛がなんだだよ。また別の映画のタイトルを⾔ってしまった。『ちょっと思い出しただけ』です、俺はまだ本気出してないだけ、みたいとか⾔うなよ。俺は本気出したよ。マスクの向こうでニコニコさせられますように。松居⼤悟監督

本作は、まさしく松居大吾による、「映画」だ。俺的には、【はな恋】より、こっちだ。興行的には、圧倒的に【はな恋】だけどね。
ただいま、アマゾンプライムビデオで絶賛?配信中。【はな恋】見たら、次は【ちょっと思い出しただけ】を見よ。よろしく哀愁

蛇足。ネコは、別れた男が飼う。