アカデミー賞の影響である。まぁ、あれだけ話題になれば当然か。累計100万部とは、奥歯に物が挟まったような表現だが、本が売れない現代、累計でも100万部突破とは、さすが先輩である。先輩にしてみれば、今更100万部突破と言われても、どうでもいいことだけどね。
しかし、今回の【ドライブ・マイ・カー】のヒットは、先輩の作品を原作にした映画では、稀有な存在である。俺のあいまいな記憶では、過去に【トニー滝谷】と【ノルウェイの森】の二作が映画化されているが、いまいちパッとしなかった。【ノルウェイの森】の映画化は、期待が大きかっただけに、がっくりこんであった。【トニー滝谷】が、原作がよくわからなかったし、当然、映画もよくわからなかった。宮沢りえの美しさだけが印象に残っている。
ちなみに、先輩は、早稲田で映像論を専攻している。色々言いたいことがあるとは思うが、全然ないかもしれん。映像は映像、小説は小説と割り切っているか。
突然だが、先輩の数多くある短編集の中で、一番のお気に入りは【アイロンのある風景】。鹿嶋灘で焚き火をするだけの話だが、それなのに印象深い。さすが、先輩と唸った作品である。ちなみにアイロンは出てこない。【ノルウェイの森】といい、先輩は、アイロン好きだ。しわしわのシャツを、パリッとするのが好きなのだろう。なんとなくわかる気がする。当然、髭は毎日剃る。俺はしわしわシャツの方がお気に入りだし、髭なんて毎日剃らない。カミソリ負けが怖い。で、そんなことは、どうでもいい。濱口竜介よ、次はこの【アイロンある風景】で、作品賞を獲得してくれ。
