どんこのアル中 日記

名古屋在住の【年金生活者】。方丈記&徒然草。

ゴドーを待ちながら を待ちながら

f:id:doncoyasuo:20220312153526p:plain


映画【ドライブ・マイ・カー】の劇中劇の形で、【ワーニャ伯父さん】の前に、一瞬だけ上演される、サミュエル・ベケット作【ゴドーを待ちながら】がある。ほんの一瞬である。このシークエンスで、不覚にも、ウルウル来た。昔昔の1980年代の前衛劇の演劇青年にとって、【ゴドーを待ちながら】は、バイブルであった。何故か、その理由はわからん。名作とは、そういうものさ。

いくつの劇団が、【ゴドーを待ちながら】を演じた。まさに「鵜の目鷹の目」であった。いろいろな劇団の【ゴドーを待ちながら】を鑑賞した。ロンドンのウェンストン劇場でも豪華な演出と役者陣でも見た。

俺のベストは、劇団旧真空鑑【ゴドーを待ちながら】。1980年に新宿京王線代田橋で見た。代田橋の駅前は、寂れた街並みで、まさしくゴドーの雰囲気。劇場は、潰れた町工場をそのまま利用。季節は真冬。いくつかの石油ストーブが置いてあったが、ほとんど効果はなかった。冷え切った、粗末な長椅子で、寒さに震えながら・・・。しかし、早稲田小劇場出身の豊川潤たちの演技は、凄かった。俺の筆力では、とても表現できない。まさしく不条理劇の本質であった。再演のいちゃもんつける、サミエル・ベケットも唸るしかない・・・と思う。約2時間の上演時間、完全に寒さを忘れた。

映画【ドライブ・マイ・カー】を見て、その当時の雰囲気をふと思い出した。あんな【ゴドーを待ちながら】をもう一度見てみたい。そして、逝きたい。ただ、それだけの話。