どんこのアル中 日記

名古屋在住の【年金生活者】。方丈記&徒然草。

前衛劇の到達点、沈黙劇【水の駅】

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今は亡き演出家「蜷川幸雄」が立ち上げた、年寄りのプロ劇団「さいたまゴールド・シアター」が【水の駅】の公演を最後に解散する。このニュースを耳にした時、久々に鳥肌が立った。【水の駅】!前衛演劇が到達した、一つの頂点。

水の駅
把手の壊れた水道から細く流れつづける水。
静寂の中、蛇口から滴り落ちる水の音だけが聞こえる。
その傍らに、ここを通りすぎていった無数の人々の投棄物の山。
荷物を抱えたさまざまな人々が、この水場を訪れる。
水に触れ、水を飲み、やがてそれぞれの場所へと歩み出して行く。

1981年、バリバリの演劇青年だった俺は、この初演を観劇している。赤坂にあった【転形劇場】のアトリエ、師走の寒さに震えた。観劇後、その凄さに震えた。「形容しがたい」演劇。演劇という名が相応しい演劇。唸るしかない演劇。
絶え間なく流れる水の音。繰り返し流れるエリック・サティの「ジムノペディ」のメロディが、いつまでも耳に残った。「品川徹」「大杉漣」、渋い役者が揃っていた。大杉漣を映画で初めて見た時、思わず「あっ、転形劇場」と叫んだ。それまで大杉漣という名前を知らなかった。しかし、その存在は老化した俺の脳みそに刻まれていた。
しかし、解散公演に【水の駅】を選ぶとは、天国で「太田省吾」も苦笑いの体。【沈黙は金】 まさにそれを体現する演劇である。


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