どんこのアル中 日記

名古屋在住の【年金生活者】。方丈記&徒然草。

アル中ハイマー【山田風太郎】

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【アル中ハイマー】とは、山田風太郎のオリジナル。アル中と認知症を掛けた造語。なかなかのセンスだ。さすが、ベストセラー作家。さて、アル中ハイマーは、毎晩、晩酌にウイスキーオンザロックでボトル3分の1ほど飲み続けた。いきなりのウィスキーのオンザロック。それは、それで、あっぱれなアル中ハイマーである。晩酌の後、眠りにつく。深夜に起きて、朝まで、そのまま起きている。本を読んだり、文筆したり、自由気ままに過ごす。明け方に、朝寝をする。晩年は、朝眠れないので、ウィスキーの晩酌ならぬ「朝酌」。これも山田風太郎オリジナル。その様は、下記の如く。

日 いまだ のぼら ず、 星 なお 凍る 多摩丘陵 の 春暁、 また 薄明 の 森 を 山鳥 の 第一声 が つん 裂山く 蓼 科 の 夏 の 夜明け 方、 梅干し 二 個 を 菜 に、 大ぶり の コップ に なみなみと 満たし 他 琥珀 の 般若等 を 傾ける。 あたかも 孤高 の 山僧と 化し た ココチ が する。しかる のち、神韻 ひょう びょう たる 眠り に 入る。あえて この 快事 を なし 得る もの、それ は 独裁 者 に あら ず 大 富豪 に あら ず、天上天下 ただ 日本 の 市井 の 一 戯作者 ある のみ、 善哉 善哉。

                 山田 風太郎【あと千回の晩飯】

有無。なんともはや、アル中の抒情あふれる名文章。いやいや、朝っぱらウィスキーを飲むアル中おやじのたわ言か。まぁ、俺も眠れず、明け方、ウィスキーを胃に流した経験があるから、えらそうな事は言えんが。しかし、それが習慣、毎日とは、さすがアル中ハイマー。
しかし、山田風太郎は、自身は、アル中なんかではない信じている。有無。そんなこともあるのか、アル中ハイマー。視力が悪くなって、眼鏡を買い替えにいったら、眼科医の分野と言われ、白内障かと疑い眼科医にいったら、糖尿病によるものだと診察され、「近いうちあなたは、盲目なるか、死ぬかだ」と言われ、糖尿病で入院したら、パーキンソン病と診断され、ベットから落ちて大腿骨骨折して、結局、肺炎で逝く。なんか、肝臓は、大丈夫だったらしい。詳しくは、わからねど。
しかし、なんとも、うらやましい人生であることよ。晩年のエッセイ「あと千回の晩飯」、老年期を楽しみながら生きている、山田風太郎の姿が浮かび上がってくる。嗚呼、俺もかくありたいものだと思うが、場末の一市民としては、望外な望みか。

ちなみに、ウィスキーのお供のお気に入りは、「チーズの肉トロ」。

薄い牛肉で、例のとろけるチーズ(国産で結構)を包んで焼く。大食でない私の場合、焼いたものは掌(てのひら)大の大きさで充分である。これに生野菜をそえ、すったニンニクと醤油で食う。ただそれだけである。本来なら肉のチーズトロといったほうがまだ正しいだろうが、語呂の関係上、チーズの肉トロと称する。これでオンザロックウイスキーを飲み、あと飯は、何ならメザシとお新香だけでもいい。<<
有無。うまそうである。なにげない文章であるが、食欲をかきたてる。やっぱ、ほんまもんは違いわ、当たり前だのクラッカー。
 
オチは、アル中ハイマーならでは言葉で締めくくろう。

酒をウマイと思ったり、愉しいと思って飲んでるかというと、可笑しくも悲しくもない気持で飲んでいる。ただ放心状態で飲んでいる。その状態がいちばん疲れなくて、それには一人がいちばんいい。そしてほろっとして、あと黙々と寝入ってしまえば目的は達せられるので、酒でもビールでもウイスキーでも、何ならショーチューでもちっともかまわない。

まぁ、これが、すべてのアル中の言葉を代弁している。宮本むなし、ってか。



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